- 簿記の知識は自営業の経営者にも必要?
- 日商簿記3級は最低でも持っていないとだめ?
- 確定申告はどうすればいいの?
近いうちに独立起業して自営業を始める予定なんですが、
経営者にも簿記の知識はあった方がいいですか?
会計ソフトへの入力作業も、最初は社長自身がやってもいいですが、いずれは家族やアルバイトに任せるようにしましょう。
会計ソフトの入力作業はっきりいって単純作業です。
忙しい経営者がわざわざ時間と労力をかけてやる仕事ではありません。
会計ソフトの入力が完了したら、そのデータをもとに確定申告を行いましょう(年に1回)
確定申告も興味があるなら自力でやってもいいですが、通常は税理士に任せる人が多いですね。
私はこれまで、税理士事務所で10年ほど働いて100人以上の経営者とやりとりしてきました。
また、サラリーマンをしながら副業として取り組んでいる仕事については、私自身も自営業者です。
これらの経験から言うと、自営業者に簿記の勉強は必要ありません。
もちろん簿記知識はあるにこしたことはないです。
ですが、「ないとだめ」と言う場面はまず存在しないですね。
経営者は簿記を勉強するのではなく、
まわりの力を上手に借りながら、
安いコストで税金の申告まで完了できる業務体制を構築する。
↑ここを目指す方が良いです。
税金の計算と申告は、だれでも1年に1回は必ずやらないといけません。
その一方で、税金の計算をどれだけ完璧にやっても、売上が増えるわけではありません。
まして、簿記の勉強をしても経営者が得をすることはほとんどないです。
(経理マンに転職したいなら別ですが…)
経営者は「いかに手間なくコストなく完了するか?」を考えましょう。
個人事業主・フリーランスに簿記が必要ない理由
自営業者(個人事業主・フリーランス)には簿記の勉強は必要ありません。
↓その理由としては、以下のようなことが挙げられます。
- 簿記の勉強から得られるリターンは少なすぎる
- 簿記の勉強をしても確定申告はできるようにはならない
- 簿記を勉強しなくても会計ソフトを使えば確定申告はできる
それぞれの理由について、順番に解説していきます。
>>確定申告の期限ギリギリの方へ!自営業者がやるべきことはこれだけ
1.簿記の勉強から得られるリターンは少なすぎる
自営業の経営者になるなら、経理は自分でやらないといけない。
経営者は簿記ぐらいわかってないと恥ずかしい…。
↑まじめに仕事に取り組むタイプの方ほど、こういう考え方をしてしまいがちです。
しかし、簿記の勉強をしても「稼げる経営者」になれるわけではまったくありません。
試しに簿記のテキストや入門書を見てみてください。
↓こういうことを勉強するのが簿記です。
- 「お客さんに商品を売ったときには、こういうふうに帳簿に書きましょう。」
- 「従業員にお給料を払ったら、このように帳簿に記録しましょう」
簡単に言えば「こづかい帳の付け方」ですね。
いつどこにお金を払ったのかを「記録する方法」を勉強するのが簿記です。
「どうやって会社を経営すべきか?」といったようなことは、簿記をどれだけ勉強しても学ぶことができません。
まちがっても、「簿記の勉強をすれば経営に詳しくなれる」とか、
「お金の管理が上手になる」などと思わないでください。
簿記で勉強するのはそういうことではありません。
ちなみに、日商簿記検定は3級〜1級まであります。
1級は「税理士試験への登竜門」といわれているぐらいで、ものすごく難しいです。
(2級でもけっこう大変。大原やTACのような資格スクールに通っても、半年ぐらいの勉強時間が必要です)
経理マンとして転職したいなら別ですが、忙しい自営業者がわざわざ時間をかけて簿記を勉強しても、それに見合ったリターンは期待できません。
2.簿記の勉強をしても確定申告はできるようにはならない
これもよくある勘違いなのですが、
「確定申告を自分でやれるようにしたいので、簿記の勉強をする」というのは完全にまちがいです。
その理由は簡単で、簿記で確定申告のやり方については学ばないからです。
確定申告というのは、かんたんにいえば「税金(所得税)の計算」を行うことですが、
これは簿記検定の出題範囲に含まれていません。
日商簿記1級に合格している人でも、確定申告のやり方なんて知りません。
確定申告のやり方を知りたいなら、本屋さんでもっと適切な入門書が売っています。
そちらを参照する方がはるかに良いですよ。
確定申告について読みやすい本はいろいろあります。
↓この手の本を1冊手元に置いておけば、簿記の勉強なんてしなくても確定申告はできますよ。
>>キンドルアンリミテッドならビジネス書が読み放題!(30日間無料)
もちろん、自営業者1年に1回は確定申告をする義務があります。
自営業者にとって、確定申告は負担する税金の金額が決まるとても重要な手続きですので、その準備はきちんとしておきましょう。
確定申告の準備として何をどうしたらいいのか?
についてはこの記事の後半で解説していますので参考にしてみてください。
3.簿記を勉強しなくても会計ソフトを使えば確定申告はできる
自営業者がわざわざ簿記を勉強しなくても、会計ソフトさえ使えれば確定申告はできます。
また、簿記の知識がある人というのは、世の中にものすごくたくさんいます。
簿記検定はTOEICなどと並んで一番人気の資格ですからね。
ものすごくたくさんいるということは、
安くでその簿記知識を提供してくれる人もたくさんいるということです。
簡単に言えば、アルバイトや派遣社員でも、
簿記知識がきちんとしている人はたくさんいるということです。
また、最近では格安料金で経理業務を代行してくれる税理士事務所もたくさんあります。
「開業したてで従業員を雇う余裕がまだない」という方は、
こういったサービスを使うことも検討しましょう。
経理にお金はかからない時代になっています。
簿記って日本では商業高校でも習う内容です。
ある程度優秀な学生なら簿記2級は卒業までに取得しているのが普通ですね。
高校を出てすぐの18歳でも簿記2級を持っている人はたくさんいるわけです。
いわば「簿記は誰でもできる仕事」ですから、
忙しい経営者がわざわざ時間をかけて自分で勉強し、自分で作業しないといけない内容では全くありません。
もうかっている社長ほど経理は自分でやっていない
税理士事務所勤務という仕事がら、たくさんの経営者とやりとりしてきましたが、
「もうかっている社長ほど経理は自分でやっていない」というのが個人的な印象です。
なぜ、もうかっている社長ほど経理を自分でやらないか?というと、
「自分の時給を高める=自分にしかできない仕事をやる」
という意識で仕事をしているからだと思います。
社長の仕事は売上を立て、利益を出して従業員を食わしていくことです。
経営者が経理スタッフのまねをして、簿記の勉強をするなんて馬鹿げています。
経理作業をどれだけ完璧にやっても売上が増えることはありませんし。
社長はまちがっても「簿記検定を受けよう。最低でも2級ぐらいはもっていないと経営者として恥ずかしい」なんて考えないでください。
経理は家族やアルバイト(または記帳代行業者)に任せ、社長は売上アップに集中すべき
経理は会社に必要な仕事ですが、経営者が自分でやることではありません。
経理の作業をしている時間というのは、当たり前ですが1円も生み出しませんからね。
従業員を雇えるぐらいの利益がでるようになってきたら、アルバイトを雇うなどして早めにこの作業からは卒業してください。
(繰り返しになりますが、経理は経営者がわざわざ自力でやる仕事ではないです)
家族に手伝ってもらうのもありですね。
会計ソフトの入力は単純作業なので、慣れれば誰でもできます。
家族を従業員扱いにしてお給料を渡すときには、
「青色事業専従者給与」を活用するようにしましょう。
家族に渡したお金を経費として落とすことができます。
自営業者の節税対策として極めて有効な方法ですよ。
↓※青色事業専従者給与についてくわしくはこちらの記事で解説しています。
-
青色事業専従者の意味とは?メリットデメリットを簡単にわかりやすく解説
「青色事業専従者の意味とは?簡単にわかりやすく説明して!」この記事では、個人事業主の方が利用できる青色事業専従者給与の意味について、簡単にわかりやすく解説します。家族を従業員にするメリット・デメリットについても説明していますので、節税対策を検討中の個人事業主・フリーランス・副業実践者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
続きを見る
社長には決算書の「作り方(簿記)」よりも「読み方」の方が重要
もう一つ付け加えると、経営者にとって大切なのは、
決算書の「作り方(簿記)」よりも「読み方」です。
経理の結果として作成される決算書は、会社の成績表のようなものです。
これは、今の会社の状況を正しく知るための資料になります。
経営判断をスピーディに行う必要がある経営者にとって、決算書を読むことができることは大きな力になるでしょう。
誤解しがちなのは、
簿記では「決算書を作る能力」をみがくことができますが、
「決算書を読む能力」はみがくことができない点です。
経営者として必要な「決算書を読む能力」を身につけたいなら、そのための書籍を1冊〜3冊読み込めばそれでOKです。
↓※読みやすい入門テキストは本屋さんでもたくさん売ってます。
経営者にとって必要な「決算書を読む能力」を身につけるなら、勉強すべきなのは簿記ではなく上のような入門テキストです。
ここをまちがえるとものすごい無駄をしてしまいますから、注意してくださいね。
↓ビジネス書を1ヶ月に1冊以上読む人なら、Kindleはぜったい使った方が得ですよ。
まとめ
↓ここまでお伝えした内容をまとめると、以下のようになります。
ここまでの内容まとめ
- 自営業者に簿記知識は必要ない
- 会計ソフトさえ使えれば確定申告はできる
- 簿記では確定申告のやり方は勉強しない
- 経営者に必要なのは決算書を「作る能力(簿記)」ではなく「読む能力」。これは入門書を1冊〜3冊読めば身につけられる
- 長期的には、経理は家族やアルバイトに任せるようにしよう。
わざわざリスクをとって独立起業し、自営業者になった人にとって、
最大の目的はたくさん利益の出せる会社の経営者になることでしょう。
(私自身はそうです。副業の自営業者ですが)
そうであるならば、経営者にとって経理や簿記は「自分でやるべき仕事」ではありません。
経営者は「どうやって簿記を理解するか」ではなく、
「いかに手間なくコストなく、経理業務を完結する社内体制を構築するか」を考えることが大切です。
開業したてでまだスタッフを雇う余裕のない方は、会計ソフトを使って最低限の経理を処理しましょう。
その後、余裕が出てきたら経理スタッフを雇うか、税理士に経理作業を依頼するようにしてください。
自営業者が確定申告に向けてやるべき3つのこと
自営業者(個人事業主やフリーランス、副業収入がある人など)は、
1年に1回は税務署で確定申告の手続きをしなくてはなりません。
↓確定申告をスムーズに完了するために、以下の3つのことをやっておくようにしましょう。
- 会計ソフトを導入する(無料から使える)
- お金を使ったら会計ソフトに入力するくせをつける
- 毎年2月16日〜3月15日の間に確定申告を行う
こちらも順番に解説していきます。
>>めんどくさい確定申告は税理士に格安で丸投げしてしまうのも選択肢
1.会計ソフトを導入する(無料から使える)
確定申告(税金の計算)を行うためには、何よりもまず「1年分の会計情報」を準備しなくてはなりません。
税金の金額は、1年間の所得金額(もうけの金額)から計算されるからです。
なので、まずは会計ソフトを使って1年分の会計情報の入力を完了しましょう。
ひと昔前には手書きで経理をやっている人もいましたが、
現在では会計ソフトを使うのが当たり前になっています。
会計ソフトはエクセルを使うよりもはるかに簡単でコストも安いので、使わない理由はありませんよ。
会計ソフトの入力ってどうやるの?
経費としてお金を払ったり、お客さんに商品を売ったりしたときには、
レシートをもらったり、請求書を作ってお客さんに渡したりしていますよね。
これらの書類(証ひょう書類と呼びます)をもとに、会計ソフトへの入力をしていきます。
例えば、お客さんの接待のために飲食したときに払った3000円のレシートがあるなら、
そのレシートを見ながら、
「接待交際費/現金 3000円」と会計ソフトに入力します。
同様に、100万円の商品をお客さんが現金で買ってくれたなら、
そのときの請求書を見ながら、
「現金/売上高 100万円」と会計ソフトに入力です。
証ひょう書類は証拠書類として必要になりますから、すべてファイリングをしておくようにしましょう。
こうやって取引を1年分すべて会計ソフトに入力完了すると、
今年1年間でどれだけのもうけが出たのか?が会計ソフト内で自動計算されます。
これがあなたの「所得金額」になりますので、これに所得税の税率を掛け算して税金の金額を計算するのが確定申告というわけです。
(所得税の計算方法は実際はもう少し複雑です)
どの会計ソフトを使えばいい?
簿記の知識がない人が経理をやるなら、会計freee(フリー)を使うのが一番いいと思います。
↓会計ソフトの選び方については、こちらの記事でくわしく解説しています。
↓会計freee(フリー)のレビューについてはこちら。
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会計ソフトfreee(フリー)は最悪?3年使ってる私の口コミ評判レビュー
会計ソフトfreee(フリー)は最悪って本当?口コミ評判はどう?この記事では、会計ソフトfreeeを3年以上使っている私が口コミレビューを書いています。すでに3回の確定申告を終えてみての感想です。別の会計ソフトとの比較もしていますので参考にしてみてください。
続きを見る
2.お金を使ったら会計ソフトに入力するくせをつける
「すでに確定申告期限が間近にせまっている…!」
という方はまとめて入力作業をやっていかざるを得ません。
期限(毎年3月15日が確定申告期限です)に間に合うよう、がんばって入力作業を完了しましょう。
まだ期間的に余裕がある方は、
仕事のためにお金を使ったり、受け取ったりしたときに、
- 「必ず会計ソフトに記録する」
- 「証ひょう書類はファイリングする」
という2つのクセをつけるようにしましょう。
これは毎日きちんとやっていけば5分でできる作業です(ためこむと大変…)
また、これらの作業は開業当初は社長が自分でやってもいいですが、長期的にはスタッフに任せてしまうべき作業です。
最初のうちは家族に手伝ってもらうのもありですね。
3.毎年2月16日〜3月15日の間に確定申告を行う
1年分の会計データの入力が完了したら、税務署で確定申告を行いましょう。
確定申告は、申告内容にまちがいが生じないように細心の注意を払ってください。
万が一、申告内容に間違いがあったら「税務調査で自宅や事務所に税務署職員が乗り込んでくる…」なんてこともありますから注意が必要です。
自信のない方は税理士に依頼することも検討しましょう。
会計データの入力さえ完成していれば、確定申告作業はとても安い料金で引き受けてくれる税理士事務所がほとんどです。
会計データの入力作業もかわりにやってくれる事務所もありますが、その場合は料金がちょっと高くなるケースが多いですね。
めんどくさい確定申告は税理士に格安で丸投げしよう
確定申告などの税金の手続きは自力でやることも不可能ではありませんが、
基本的に税理士に丸投げしてしまうのがおすすめです。
まちがった内容の申告をしてしまうと、税務調査が後からやってきて、
延滞税や加算税といったペナルティが課せられてしまう可能性があります。
これらのペナルティ(延滞税・加算税)は期限までに現金で納めないといけません。
事業がもうかっている人ほど、これらのペナルティから生じるリスクは大きくなると言えます。
会計や税金の知識に自信がない方は、無理せず税理士を利用するようにしましょう。
苦労して自力で確定申告をやって、しかもリスクも高い…
では、何をやっているかわかりませんからね。
経営者としてある程度利益を出している人は税金の恐ろしさもわかっているので、
税理士と顧問契約を結んでいる人がほとんどですよ。
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